IAP呼吸法とは?
色々な疲労回復法を実践しているスタンフォード大学における、いちばんの目玉が「IAP呼吸法」。疲れている選手も、ケガでリハビリ中の選手も、慢性的な痛みがある選手も、必ずIAP呼吸法を実践すれば驚異的にレカバリーが可能な呼吸方法です。
「IAP」とはIntra Abdominal Pressureの略。
Intra 内部に
Abdominal 腹部の
Pressure 圧力
日本語に訳すと「腹腔(ふくこう)内圧(腹圧)」。人間のおなかのなかには「腹腔」と呼ばれる、胃や肝臓などの内臓を収める空間があり、この腹腔内の圧力が「IAP」。
一言でいうとIAP呼吸法とは、息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法で、お腹周りを固くしたまま息を吐ききるのが特徴です。
下の動画のようにほとんど腹部はうごいかしません。
IAP呼吸法 動画
IAP呼吸法のやり方
IAP呼吸法 Step1
①椅子にゆったりと座ります。
耳と肩のラインが一直線になるようにします。
お腹と太もも、ひざ裏を90度にします。
IAP呼吸法 Step2
②両手の指先をお腹に向けて膝の上へ置きます。
そのまま足の付け根までスライドします。
両手の指先が足の付け根に軽く差し込まれるくらいがベストです。
IAP呼吸法 Step3
③5秒かけて鼻からゆっくり息を吸いお腹を膨らませます。
差し込んだ指を押し返すようにお腹を膨らませるようにします。
吸うときは肩を上げません。
息を吸うときはリラックス状態をキープします。
IAP呼吸法 Step4
④吸った空気をお腹を膨らませたまま7秒かけてゆっくりと口から息を吐きます。
胸部全体をゆっくり下げるよう意識しながら息を吐きます。
息を全部吐ききったら1セット終了です。
IAP呼吸法のやり方のコツ
これを繰り返します。
1日1回でもいいのでルーティーンにしてください。
『継続は力なり』です。
1週間、継続すれば効果がでます。
IAP呼吸法 Youtube 公開動画
IAP呼吸法についてイラストでわかりやすく解説しています。
IAP呼吸法と腹式呼吸法 違い
『スタンフォード式 疲れない体』の著者 山田知生氏は「腹圧呼吸」とも呼んでいるといいますが、しばしば「腹式呼吸」と間違われるます、しかし両者は大きく異なる呼吸法であり、その違いは、息を吐き出すときに「おなかをへこませる」か「へこませないか」という点。
腹式呼吸:
腹部の動きを意識して行う呼吸をいう。息を吸うときはお中を膨らませ、息を吐くときにはお腹を凹ませる。胸郭の拡張、収縮をあまり意識せず横隔膜の上下運動を主体とする呼吸であり、そのことから横隔膜呼吸とも呼ばれている。
腹式呼吸はまず二酸化炭素を吐ききり、次に意識的に強く長い息を吐いてから自然に吸いあげます。肺の入っている胸腔は主に、肋骨とそれを支え動かす筋群、横隔膜で構成されています。胸腔を広げるためには肋骨を開き広げるか横隔膜を収縮させて下げるのですが、特に横隔膜を大きく動かすと腹腔が変形し腹が前方へ突き出ます。ここから息を吐き出す力は腹筋の収縮と腹圧によるものであるから腹で呼吸しているように感じられるのです。
IAP呼吸法の効果
「IAP呼吸法」を実践すると、次のような効果が期待できます。
①腹圧が高まることで、体の中心(体幹と脊柱)がしっかりと安定。
②体幹と脊柱が安定すると、正しい姿勢がキープできる。
③正しい姿勢になると、中枢神経と体の連携が円滑になる。
④中枢神経と体の連携が円滑になると、体が「ベストポジション」(体の各パーツが本来あるべきところにきちんとある状態)になる
体の平衡は、疲労と大いに関係します、体が歪んで姿勢が悪くなり、それが定着してしまうと、ちょっとした動きにも余計な負荷がかかります、それが慢性化すると、限られたエネルギーを無駄に消耗する「疲れやすい体」になってしまうということ。
・体が「ベストポジション」になると、無理な動きがなくなる
・無理な動きがなくなると、体のパフォーマンス・レベルが上がり、疲れやケガも防げる
IAP呼吸法のメカニズム
IAP呼吸法の効果のエビデンスを説明します。
腹圧のおかげで維持できる良い姿勢
重心の高い姿勢には、お腹の圧力(腹腔内圧:腹圧)とお腹の容積(腹腔内容積)が大きく関係しています。
筋は常に張力(収縮する力)を持っていて、運動をしていないとき(安静時)にも収縮しようとする力を持っています(筋緊張)。この安静時の張力(安静時筋緊張)がお腹の周りで均等に生じるとお腹の中心に向かって圧力を作る力が生じます。
これが「腹腔内圧」です。
お腹の圧力が高くなると圧力は、胴体内で圧力は上に向かうため、お腹周りが全体的に縦方向に長くなり、且つ、重心が高い位置になります。
つまり、腹腔内圧が適切に生じると、身体全体を上方に向かって押し上げられる力が生まれて、重心が高くなり、結果的に、関節がより自由に動けることにつながるため、怪我の予防にもつながります。
また、ストレッチをすることで、お腹周りの筋の質を柔らかく、筋の長さを長くすることにより、結果的にはお腹の容積が少し大きくなります。
これが「腹腔内容積」です。
腹腔内容積を適正に大きくしておき、腹腔内圧を適正に保つことで、良い姿勢が保たれることになる、これがIAP呼吸法のエビデンスです。
身体内圧の原理
身体内圧の原理をペットボトルで説明します。
ボトルの上下の真ん中辺りがお腹周り、真ん中辺りから下が骨盤、真ん中辺りから上が胸回り(胸郭)と考えてください。ボトルの上下の真ん中辺り(お腹周り)をぎゅっと握ると中のものは上に向かって飛び出すような力が加わるため、ペットボトルは縦に長くなろうとします。
この原理が腹腔内圧によってお腹周りが全体的に縦方向に長くなり、且つ、重心が高い位置になるメカニズムです。
腹腔内圧力をより高くするためには、ペットボトルでいえば、真ん中辺りの径が大きい方が有利です、つまり、腹腔内容積が大きい方が良いわけです。径を大きくするためには筋の長さが必要です。
筋の長さを作り、緊張度が高まれば、腹腔内圧は高まり、腹腔内容積も大きくなり、運動に有利となるわけです。
コアストレッチやインナーマッスルエクササイズが良いといわれる理由は、この腹腔内圧と腹腔内容積を維持するのに有効だからなのです。
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