スキューバー、フリー、スキンダイビングの耳抜き 初級編 【 図解】

1.潜水物理:ボイルの法則

水中のダイバーにかかる圧力は2つの要素からなっています。

ひとつは水面より上の空気すなわち大気圧

ふたつはダイバーの上にある水の重量、すなわち水圧です。

海水面での気圧は一定で、この圧力を1気圧と呼び、圧力を測定する基準となっています。

深さ10mの水(正確には海水)は大気圧と同じ圧力、つまり1気圧となります。

水中では深度が10m増すごとに1気圧ずつ増加していきます。

水深10mでは合計2気圧の圧力がかかります。

20mでは大気圧の1気圧と水圧の合計2気圧で3気圧というように

増加していきます。

中が空洞の柔らかい入れ物を水が入らないように逆さにして水中に沈めると空気の体積が圧力に比例して変化します。

水深10mでは圧力は2倍になり(2気圧)体積は50%減少します。20mでは3気圧体積は約33%になります。

Boyle's law

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気体の法則:ボイルの法則

気体の法則は潜水中の空気の持続時間に影響を及ぼしまた中耳、副鼻腔、肺等の身体空間に

影響を与えるのでこの知識はダイバーにとって重要である。

ボイルの法則は圧力と容積関係を定義する法則であり(温度が一定の時)、一定質量の気体の容積は絶対圧力と反比例関係にあると定義される。

一定量の気体は圧力が増加するとその容積は減少し、反対に圧力が減少するとその容積は増加する。つまり、圧力が2倍になると気体の容積は1/2になり、その反対に圧力が1/2倍になると気体の容積は2倍になる。

数式で表現すると下記のようになる。

V ∝ 1/p       (V=容積 、P=圧力)

一定量の気体では容積と圧力をかけ合わせた値は常に定数なる。

つまり、  P×V=定数

元の気体の容積がV1でその時の圧力がP1とすると、気体が変化して容積V2、圧力がP2

となった時、下記の関係式がなりたつ。

P1×V1=P2×V2

Boyle's law2Boyle's law3

2.耳抜きとは?|耳抜き 原理

耳抜きの意味を辞書から引用。

日本語:潜水時に,鼓膜内部の圧力を,外部の水圧と同じにすること。鼻をつまんで耳管から空気を送る。(三省堂 大辞林より)

日本語の場合の耳抜きは 1.中耳腔内圧平衡、2.副鼻腔群圧平衡 の2つの部分が含んだものとしているが、英語の場合は別々にしている。

英語読みすると 1.イアーズイコライジング(Ears-equalizing). 2.サイナスイコライジング(Sinus-equalizing).

又、英語では下記の表現で耳抜きを表現している場合もある。

英語Ear clearing or clearing the ears or equalization(From Wikipedia)

中国語:耳压平衡(百度百科)

スペイン語:Maniobras de presurización

耳抜きである圧平衡は外圧とし身体内の圧力を同じすることを言います。

耳抜きを必要とするメインの身体の箇所は中耳腔、副鼻腔です。

圧力の不平衡が発生する場所、条件は電車移動中のトンネル内、エレベーターの上昇、下降時、高山への登山、飛行機の上昇、下降時そして海水への潜行、浮上時です。

平地においての耳抜きは中耳腔、副鼻腔内の気圧より外圧が高く(低く)なるための外圧を

中耳腔、副鼻腔内に導き、圧力のバランスをとる操作を言います。

水中では水圧で圧迫された中耳腔、副鼻腔内の圧力が低くなるために圧力に高い空気を肺から導き、中耳腔、副鼻腔内の圧力のバランスを取ります。

*肺は外部の水圧が高くなるにしたがって縮小して容積が小さくなりますが肺の内部の圧力は高くなります。

耳抜き 飛行機

地上から高所、空中での耳抜きは唾を飲んだり、顎を動かす等の動作で耳管が開き

中耳腔、副鼻腔内の圧力のバランスを取ります。

耳管は、中耳内の圧力が高いときの方が開きやすく、逆の場合はなかなか鼻から空気が入って行きにくい構造になっていますので、着陸に向かって急速に高度が下がる場合には特に中耳の換気が上手く追いつきません。

居眠りをしていると唾を飲む回数が減るので耳管がふさがりやすくなります。飛行機が降下を始めたら眠っていないで、飴をなめたり、ガムをかんだり、少量の飲料を飲んで意識的に「つば」を飲み込む動作を繰り返して行うようにしましょう。バルサルバ法といって、鼻をつまんで口を閉じ、静かに口の方へ息を吹いて頬をふくらませる要領で鼻の奥の圧力をあげる、ダイビングの時に行う「耳抜き」をすると楽になります。バルサルバ法が出来ない方は、鼻でバルーンを膨らませることで耳管を開くようにする自己耳管通気器具(オトヴェント)を使って訓練することで上手くゆくことがあります。

耳抜きができない子供の場合、風船を与えて膨らませると耳管が開いて、耳抜きができる場合があります。

トインビー法という、鼻をつまんで唾液を燕下する要領の耳抜き法も有効です。乳幼児の場合は白湯などを入れた哺乳瓶を口にくわえさせておくと盛んに飲みます。すると、燕下運動に伴って耳管が開くので予防になります。機内は非常に湿度が低いので鼻咽腔を乾燥させないためにマスクをしているのもよいでしょう。

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潜行時の問題点:

ダイバーが潜るにつれて中耳、副鼻腔内の空気容積は減少する。

その時に空気を追加して気体容積の減少を補てんしないと圧力外傷が生じる。

圧力外傷が受けやすい空間は体の中では中耳とサイナス(副鼻腔)です。

人工的な空間としてはマスク内の空気です。

潜行をすると段々と水圧が増してきて体内の空気が圧縮され圧迫感、不快感が生じます。

さらに潜行すると痛みに変わります。

これをスクイズ(Squeeze 絞る)と言います。

スクイズとは圧力のバランスが取れないことを言い、空間の外側の圧力が内側の圧力より

大きいために痛みが生じます。

スクイズを防ぐには潜行中に減っていく体内の空間の容積を空気で補充することにより

正常に保ち、自分の体の中の圧力と周囲の圧力が同じようになるようにバランスをとる

ようにします。

これを圧平衡(equalization)と言います。

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耳とサイナスの空間は咽喉とつながっている為に肺からの空気を送ってやることにより圧平衡が可能です。

マスクの中の空間には鼻から空気を送り込んで圧平衡します。

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また、詰め物をした虫歯の内部の空間によりスクイズが生じ、痛みを感じる時がありますのでその際は歯医者にての再検査が必要です。

肺は容積が大きいですが柔軟性があるためにスクイズになることはありません。素潜りでは十分に息を吸い込んで潜れば、潜行中は肺の容積は小さくなり、浮上中は再び膨張し肺に影響はありません。

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耳抜き(圧平衡)のテクニック|耳抜き 仕方

圧力の増加による最も影響されやすい空間は中耳内の空間ですが健康であれば(風邪、アレルギー性鼻炎等でない)適切な耳抜きで圧平衡が可能です。

 耳抜きの方法としては

  1. バルサルバ法: 口を閉じ、鼻をつまんで肺からの空気をゆっくり鼻に送る。

        2.フレンゼル法:口を閉じ、鼻をつまみ、喉頭蓋を閉じ、舌で口内の空気を鼻に送る。

                        3.トンビー法:唾を飲みこむ、等があります。

潜行時には不快感がおこる前に1mごとに圧平衡をしてください。不快感が感じてから

耳抜きをしても水圧で空気の通路が塞がれてしまい耳抜きができなくなります。

不快感が感じたら不快感がなくなる迄、浮上して耳抜きをやり直します。

絶対に力ずくで無理やり耳抜きをしてはいけません。鼓膜の破損、中耳炎等に障害が生じる恐れがあります。

また、ウェットスーツのヘッドフードがきつく、耳を塞いでいる場合、耳抜きができなることがあります、これは潜行中に耳の中に閉じこまれた空気が圧縮され鼓膜が外側に引っ張られ、外耳道内壁が鬱血します、これを防ぐにはフードを耳からずらして空気が抜けることができる空間をつくります、これは通常の耳栓をしたときも同じです。

どんなダイビングでも耳栓をしてはいけません。

イタリーの伝説的ダイバー、シギは、片方の耳には鼓膜が無く、片方の鼓膜には孔があいていましたが約80m迄潜水していました。

また、昔の海女さんは漁の季節になると針で鼓膜を開けて、良質な粘土を耳に詰めて、中耳に水が入らないようにして潜っていたそうです。(鼓膜の再生力は早く、化膿しないかぎり、すぐに治りやすい)

 鼓膜に穴が開いていれば面倒な耳抜きをする必要はなく、鼓膜の付け根が痛くならないが中耳にリンパ液が滲出して潜水性中耳炎になるリスクにあるので深く潜水した時はやはり耳抜きが必要と思われるが潜水性中耳炎になっても鼓膜に穴があいてるので中耳に溜まったリンパ液に容易に外耳の外に排出できた為に必要でなかったのかどうかは科学的根拠なし、不明。

リバース・スクイズ(Reverse Squeeze)

浮上中の中耳圧外傷は比較的珍しい症状です。

浮上中、中耳内の空気は膨張し、膨張した空気は何処かに逃げなければなりません。

通常は意識しなくても膨張した空気は耳管を通して咽喉に逃げていきます。

よく、注意すると耳から空気が抜ける音を聞こえます。

まれに浮上中に耳管から空気が抜けない時があり、膨張した空気は中耳内圧を上昇させて鼓膜を外側に膨らまし、痛みを感じさせ、最悪は鼓膜が破裂します。

このような症状は抗充血剤(点鼻薬、エフェドリンル類似薬の錠剤など)を服用したダイバーに見受けられます。

緊急処置としては浮上中に耳の痛みを感じたら圧力不均衡を最小にするために少し潜行して鼻をつまんで唾を飲みこみ(トンビー法)耳管を開放するようします。

『潜行時、浮上時の中耳腔の変化』

Youtubeで公開している圧平衡の英語版動画を紹介。

耳の構造

耳は解剖学的に外耳、中耳、内耳に分けられる。

外耳は外から見える耳たぶ耳介)と耳穴から構成される長さは約3cm、
耳介によってとらえられた音波は反射して外耳道に集められ、鼓膜に到達する。

鼓膜は約10mm×9mmの楕円形の形をしており、厚さは約0.1mmであり外耳道に対して45度傾斜している。

中耳は頭蓋骨の堅い骨の部分で囲まれたソラ豆大の空間(平均:8~10cc)で紙のように薄い鼓膜によって外耳と分離されている。(目薬の容量は13ml)

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中耳の空洞部分(中耳腔)はふたつの開口部があります。
そのなかで中耳から咽喉につながっている耳管が耳抜きに重要な器官です。

耳は中耳→内耳とつながり聴覚だけではなく、平衡感覚も司り、脳内の脳せき髄液とつながる最も重要な部位である。

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中耳内の3つの関門

中耳は空気で満たされているため、中耳腔(チュウジクウ)とも言います。その中耳腔全体に空気を行き渡らせようとしたとき、狭くて閉じてしまいがちな関所が3カ所あります。その第一関門は空気を取り入れる耳管(ジカン)です。第二関門は、上鼓室の入り口となる鼓室峡部(コシツ・キョウブ)、第三関門は、上鼓室と乳突洞の間です。

乳突洞・側頭骨含気蜂巣とは側頭骨にある多数の含腔を言い、生理学上の機能は不明であるが粘膜を通じたガス交換や、内外圧に対してのクッション層になっている。

鼓室と外気の圧不平衡が生じた場合、耳管を開けば解消するが側頭骨含気蜂巣の粘膜上皮細胞のガス交換によってもある程度の調整はできる。

この機能は耳管の開閉に比較すれば劣るもの、睡眠中の圧平衡ができない状況では重要な働きをしている。

圧平衡がうまくできない場合、はじめ含気蜂巣内の空気によって圧平衡がされる。
その後、含気蜂巣粘膜の膨潤が発生、さらに空気が不足な場合は粘膜細胞破層でリンパ液が滲出する。最終的には粘膜の毛細血管が破裂し、鼓膜の損傷、穿孔に至る。

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耳管:鼓室と咽頭をつなぐ管である。(約33~35mm)
鼓室は耳管と咽頭を経て外部に通じているので鼓室内圧は外気圧と同様に保たれる。
普段は閉鎖しているが唾を飲んだり、欠伸をすることで口蓋帆張筋の収縮により開閉される。
耳管は通常は生体内ガスを排出する為の一方通行となっている(側頭骨含気蜂巣→中耳腔→耳管咽頭口)しかし、外部の気圧が急激に変化したときだけこの一方通行が一時的に相互通行となる。正面から見ると耳管は鼓室から目の下を斜めに繋がっている。
耳管(エウスタキオ管)と咽喉の筋肉に関係を説明します。
2才未満の幼児において、耳管は開ける口蓋帆張筋は嚥下の間、最適化角度でないので耳管を開けることが難しいです。
しかし、子供の頭が成長して、耳管の角度は変わり、口蓋帆張筋はより効果的に耳管を開けることができます。
これは、耳感染症を患う多くの幼児がおよそ2才から耳感染症から脱する理由のひとつです。
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又、下記が耳管の開口部が口蓋帆張筋と口蓋帆挙筋によって耳管がオープンになった時の写真です。ear6ear5

TVPMとLVPMの随意収縮により耳管(エウスタキオ管)を開ける。
TVPM:tensor veli palatini muscle 口蓋帆張筋
LVPM:evator veli palatini muscle 口蓋帆挙筋

スクイズ (squeeze:押しつぶす)

潜行時の中耳圧外傷(中耳スクイズ)

耳の圧外傷は潜行時に起こりやすく、最も起きりやすい場所は中耳です。
スクーバー受講生の約30%は程度の差はあれ耳の圧外傷を起こします。

耳抜きがうまくいかないと水圧により鼓膜が内側に押しやられ、耳に水圧を感じる。

それと同時に中耳内の圧縮され減少した空気容積に相当する血液、リンパ液によって補われるので中耳内壁は膨張する、極限に達すると中耳内に出血したり、リンパ液が参出する。

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圧外傷が起こる深度は中耳の空洞の大きさ、鼓膜の弾力性によって決まる。
通常は水深1~2mで起こるのでそれまでに耳抜きをしないと中耳圧外傷が起こる危険が高くなる。

中耳外傷の最初の危険信号は耳で水圧を感じることである。
水圧の知覚が痛覚に変わり、影響を受けている場所が激しく痛み出す。
圧平衡ができないと潜行するにしたがってこの痛みは増す。

そのまま、潜行すると鼓膜が破裂し、水圧や痛みは感じなくなり、代わりに耳の中に冷感を感じる。
これは中耳に海水が浸入して平衡器官付近の骨や組織を冷やすからである。

そうすると熱移動によって平衡器官内のリンパ液の移動が起こり、平衡器官を刺激してめまいを感じる。また破裂した鼓膜から中耳へと侵入した海水は耳管を通して咽喉まで達することもある。

耳の外傷、特に鼓膜破裂はめまいを起こす。
このめまい感覚は平衡失調(バーティゴ)と呼ばれる。吐き気をともなうこともある。

軽度の圧外傷は潜水後に耳の中に不快感を感じたり、軽い痛みを感じる。
また、耳の中に水が残っているような感覚や、自分の声が違和感のある音声に聞こえたりする。

ガムをかんだり、唾を飲みこんだり、顎を左右に動かしたときに中耳に溜まっていた血液、リンパ液の気泡がはじけて破裂音がすることがある。

浮上中に中耳に閉じ込められた空気が膨張して、中耳に溜まった血液を耳管に押し出すこともある。
浮上後、鼻血を出したり、唾液に血が混じっていたりするはこのためである。

『鼓膜破裂写真』鼓膜にスリット状の亀裂

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治療:

中耳圧外傷を経験したダイバーは潜水を熟知している医師に検査して貰い鼓膜、内耳の損傷をチエックする必要がある。そしてその原因の評価と再発防止が大切である。

中耳と内耳の損傷の程度を知る上で聴力検査(オーディーオグラム)は不可欠である。

耳管を開くやすくするための経口抗充血剤(あるいは鼻のスプレー薬)を投与したり鼻や咽喉に感染症があったり、中耳内に出血を認めた場合には抗生物質を投薬する医師もいる。

重症の合併症が治まれば耳を安静にして圧外傷が完治するまでダイビング、飛行機の搭乗、耳抜きは厳禁である。普通、完治するまでに1~2週間を要する。

ダイビングを避けるべき期間は圧外傷の程度による。
医師が圧外傷の完治が確認し、耳抜きが可能になるまでダイビング等は行ってはならない。

鼓膜の破裂があった場合、数日で鼓膜が再生しているようにみえても完治するまでに1~3か月かかる。完治しないうちにダイビングを行うと鼓膜の再破裂を起こる恐れがある。
修復部が完治して耳抜きができるようになるまでダイビングを行ってはならない。

副鼻腔のスクイズ(圧外傷)

副鼻腔は頭蓋骨の底部と前部の中にある空洞部分であるが確かな役割ははっきりしない。
鼻腔へと続いている副鼻腔は大別して4つの部分から構成されている。

1. 頬の部分の骨の中にある上顎洞
2. 頭蓋骨の眼窩のすぐ上の部位にある前頭洞
3. 鼻基底部の薄い骨の中にある篩骨洞
4. 頭蓋骨・中央深部にある蝶形骨洞
副鼻腔は柔らかい血流の豊富な粘液分泌組織で覆われている。粘膜組織は血管から供給されている。
それぞれの副鼻腔は導管と呼ばれる副鼻腔開口部があり、鼻腔へと続いている。
通常は開いており、大気とつながっている。

中耳の乳突洞も同じような構造で中耳につながっている。
副鼻腔の含気容量は約80CCである。(例としてオロナミンCの容量が100cc)

よって、肺に十分な空気を蓄えた状態で潜行し、いつでも咽喉、副鼻腔へ外気圧相当の空気を

送り出す必要がある。

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副鼻腔圧外傷のメカニズム

ダイビングで潜行しても通常は咽喉と副鼻腔はつながっているので自動的に圧平衡ができる。
しかし、アレルギー、喫煙、気道感染症、抗充血剤点鼻剤等が原因で鬱血が生じ、副鼻腔の導管の閉鎖されることがある。前頭洞の頻度が最も高い傾向があります。

症状としては、リバースブロックを起こした副鼻腔の部位に応じて、前頭部痛、額痛、頬痛が出現します。潜水後の顔面(前頭洞の場合は額部周辺)の違和感・疼痛として感じることもあります。副鼻腔を構成する骨は薄いため、副鼻腔内圧の上昇により空気が骨の間隙を通り、頬、眼窩、脳に漏れ出ることがあります。空気の流出を疑った場合はCTにて確認します。頬への流出は顔貌を大きく変えることがありますが2週間ほど経過観察すればほぼ改善します。眼窩への流出については予後がさまざまです。脳に空気が漏れ出た気脳症に対しては、脳圧亢進や感染など病状に合わせた治療を行います。高気圧酸素治療は再発の危険性があるため行いません。

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副鼻腔の開口部が閉鎖されると潜行とともに増加する圧力により内壁粘膜質、鬱血がおこり、最終的には出血する、そして浮上時には副鼻腔に閉じ込められた空気が膨張して塞いでいた物質と血液を押し出す。

潜行中に副鼻腔が塞がってしまうと副鼻腔の空気は圧縮されて副鼻腔圧外傷を引き起こす。
空気の体積が縮んだ分は副鼻腔の内壁の粘膜浮腫、組織液、出血によって補われる。

この滲出した組織液、血液は元の体に吸収されるまで数日以上かかるので細菌の繁殖しやすくなり、副鼻腔炎の原因になる。

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治療:

副鼻腔圧外傷は通常、治療しなくても自然に治る、点鼻薬、経口抗充血剤を使用すれば副鼻腔内に出血した血液を早く排出できる。

潜行中に頻繁に耳抜きを行うことにより、副鼻腔に空気を送り込むので副鼻腔外傷の予防になる。

 歯のスクイズおよびリバースブロック:

充填物や補てつ物(金歯や銀歯)、またはむし歯などがある場合、その歯髄や歯の周囲に空洞があると、潜降時に歯痛を生じることがあります(スクイズ)。スクイズより頻度は少ないものの、リバースブロックを起こすことがあります。潜降時になんとか空洞に入った空気が、なんらかの理由で浮上時に出て行かず、疼痛が出現することで起こります。レントゲンを撮り、空洞を確認して治療します。

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マスク・スクイズ

ダイビング用のマスク(水中メガネ)は、鼻から空気を吐いて、マスク内に空気を入れることができるため、潜降中にマスク内が陰圧になることを防ぐことができます。しかし、ダイバーが潜降中、鼻から空気を出すことを忘れていて、マスク内が陰圧になってしまうとマスクス・クイズを起こします。マスク・スクイズを起こすと、眼球結膜の血管が切れて内出血したり、眼瞼やその周囲が腫脹することがあります。

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マスク・スクイズによる顔面出血を防ぐには潜行中に水圧と水中マスク内圧を均等にするための水中マスク内に鼻から息を吐けばよい。浮上時には膨張した空気がマスクのシール面から自然と排出される。

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内出血した眼

海女の水中メガネ:舳倉メガネ

 舳倉島の海女さんが使用していた水中メガネが下記の図である。
 メガネ部分の両脇に細いパイプを取り付け、それをゴム袋に取りくけている。
 深く潜行すると自動的にゴム袋の容積縮小してメガネ内の空気圧と水圧の自動
 調整ができるようになっている。

 鼻はマスクでカバーされていないので耳抜きが楽にできる。
 また、水中で貴重な空気をマスククリアーする為に使用しなくても済む。
 まさに合理的な道具であった。

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画像出典先:『海女のいる風景』  著者:大崎映晋

耳抜きの種類:

耳抜きによる中耳空間の均圧を上手くおこなえば中耳、内耳の圧外傷を予防することができる、水中で水深が変動するごとにこの均圧が必要である。

頻繁に耳抜きをして耳に不快感を感じる前に圧平衡をおこなう。
深度が浅いほど気体の容積変化量が大きいので(ボイルの法則)浅いほど、頻繁に耳抜きを行い必要がある。
耳に損傷を与えないようにあまり力まないで耳抜きを行う。
熟練したダイバーは潜行前にすでに通気の動作を開始しており、簡単に耳抜きができる。

ダイバーの耳管通気について研究したファーマー氏によると潜行を開始して鼓膜の圧力を感じる深度はたかだか0.7mである。
この時、鼓膜に内外圧差も約0.7mで鼓膜と耳小骨は内側に牽引されて耳痛を覚える。
上気道感染症にかかると咽喉や耳管開口部が鬱血して耳抜きがうまくいかなくなる。
鼻炎、アレルギー性鼻炎、喫煙習慣などがあると同じような悪影響がある。
このような状態でダイビングをおこなうのは好ましくない。
*潜水前ダイビング注意ポイント
潜行前に水面で耳抜きを行う、鼓膜が少しだけ外側に膨らみ、圧平衡ができることが確認することがでる。最初に潜行時に耳抜きを忘れても多少の余裕ができる。

1mほど潜行するごとに耳抜きをおこなう、これは『先取り耳抜き』といって耳に痛みを感じてから耳抜きを行うより楽に耳抜きができる。
どうしても耳抜きができない場合は耳管がロックされた状態となってしまって圧平衡ができないのでそれ以上の潜行は中止する。

これは中耳と咽喉との差圧が大きいために耳管開口部が塞がれているためである。
このような時は少しだけ浮上して耳抜きを繰り返す。
耳抜きができない場合はダイビングを中止する。

足先から潜行すると耳抜きはヘッドファースト潜行よりもずっと楽に行える。
また、片方の耳だけが耳抜きが悪い場合は悪い方の耳を水面に向けておこないと
抜けやすくなる。
以下に潜行中の耳抜きのいくつかを紹介する。

 バルサルバ法:Valsalva maneuver | ヴァルサルヴァ法

この方法は簡単で最もよく使用される。
やり方は鼻をつまんで口を閉じ、ゆっくりと肺から息を送り出す。
こうすることにより咽頭内の空気の圧力が高まり、耳管をとおして中耳内に空気が送り込まれる。
咽喉内に感染源があるとこれも耳管を通して中耳内には入り込み、感染症を引きおこす。
上気道感染症があるときダイビングを避けなければならないもうひとつの理由がここある。
バルサルバ法を行うときは顎を動かしたり、下顎を前に突き出しようにすると耳管の通りが良くなります。
バルサルバ法の欠点は息を吹き込み過ぎると内耳損傷を引き起こす可能性があります。
もうひつつの欠点としてはヘルメット潜水器を装着していると指で鼻をつまめないことです。下記にYoutubeで公開しているバルサルバ法を紹介。

 フレンツェル法:Frenzel maneuver

耳管に穏やかに空気を送り込み、耳管を開く方法です。
具体的には鼻をつまみ、唇をマウスピースに蜜着させ、声門を閉じ、舌の後方を軟口蓋(咽頭の奥=上咽頭)に押し当てる方法である。
この動作は口腔と上咽頭に捉えた空気のかたまりが筋肉の収縮により開いている耳管に穏やかに押し込むことができる。
現在、最も安全で確実な方法としてフレンツェル法が良いとされている。
というもの、耳管通気は最小の空気量で中耳腔を外耳道圧(ダイビングでは水圧)に平衡させなければならない。
この耳管通気の空気量は平均 毎秒1.3mlであり、潜行時には浅い深度ほど、ボイルの法則がきいて気体容積の変化がおおきい。
このため、海水から水深 5m までが通気の良し悪しを決めることになる。
下記にYoutubeで公開しているフレンツェル法を紹介。

 トインビー法:Toynbee maneuver

鼻をつまんで唾を飲みこむ動作をして耳管を開いて中耳に空気を入れる方法です。
この方法では耳管が一瞬、開きますが少量の空気しか中耳に入り込みません。
バルサルバ法より効果的ではありませんが耳に損傷を与えない方法です。
*嚥下運動が起こると口蓋帆張筋が収縮して耳管を開く中耳腔産出のガスが耳管を通って外に出る(大気圧環境)上にYoutubeで公開しているトインビー法を紹介。

ヨーング法:Yawning

*あくびをすると耳管が開放し、鼻腔内の空気が中耳腔の送り込まれることにより耳抜きが 可能となります。空気を無理に送り込まない方法なので、耳管に負担をかけない安全な方法です。

フリーハンド法:(French: béance tubaire volontaire (BTV) )

欠伸をすると自然と時間が開きます。
耳管は唾を飲んだり、欠伸をした時に瞬間(0.3秒)だけ開閉します。

 耳管閉鎖症の訓練

退化している耳管開口部とその周囲、耳管全体、耳管峡部との周囲の神経と連動する筋肉をトレーニングして、意識して耳管を開く訓練をします。
普段使用していない筋肉、神経をはじめは意識して動かすことから始めます。

Youtubeで公開していをBTV法を紹介。

 耳管通気法の比較 『潜水医学』より

耳管は鼓室と咽頭をつなぐ管で平素は閉じている、
ダイビングで外耳道圧が高くなり、同時に咽頭腔が高くなったとき耳管括約筋の働きで耳管開口が開き耳管に空気が送られる。
フレンツェル法とバルサルバ法の比較はつぎのとおり。

フレンツェル法 バルサルバ法
通気法の教育 ベテランは自然にこの方法を習得 ほとんどのダイバーが最初にこの方法を教えられる
通気の原理 鼻腔を閉じ(カスクカート部に当てる、もしくは鼻翼をつまむ)唾を飲みこむ動作により舌は後方にひかれ、咽喉の奥を閉じる。英語の“K”あるいは“ガッコー”と発声すると舌根部が持ち上げられて結果して咽頭にある空気が圧縮されて耳管に空気が送りこまれる。フレンツェル法と同じ理屈で“トンビー法(Tonbee)法がある、鼻腔を閉じてのどの奥を閉じてから嚥下動作おこない、耳抜きをする。

鼻腔を閉じ(カスクカート部に当てる、もしくは鼻翼をつまむ)肺の空気を鼻腔からブロー(吐く)する。

結果として咽頭圧が急激に上がり耳管に強制てきに

空気が送りこまれる。

リスク 通気がバルサルバ法ほど、確実でない。早め早めにこの動作を繰り返す。 バルサルバ法では耳管筋が働かないのですでに中耳腔と外事腔の差が強い場合、耳管開口部が閉じられている状態になり無理なバルサルバ法は内耳損傷を来す恐れがある。強いブローを連続して5秒以上続けるのは危険である。

深度 外耳道圧 深度 外耳道圧 深度 外耳道圧 深度 外耳道圧 深度 外耳道圧
30cm

0.03気圧 1.2m 0.12気圧 1.8m 0.18気圧 2.4m 0.24気圧 3.0m 0.3気圧
外耳道内部に圧力を

感じる。

鼓膜が中耳腔側に凹む。

中耳腔と内耳の間の正円窓と卵円窓に圧波。

耳管に粘液が浸潤し始め耳管の通気が難しくなる。

鼓膜の神経終末が伸展し疼痛が感じる。

鼓膜が強く伸展し鼓膜組織は粘液を垂れ、炎症がおこり修復に一週間を要する。

さらに進むと鼓膜の小血管が拡張し破る。修復に3週間を要する。

耳管は完全に閉鎖し通気は不可能。

幸運ならば周囲組織からの血液の粘膜が中耳腔を満たし完全な中耳スクイズを呈する、空気でない浸潤液が中耳の圧平衡を満たす。痛みは治まるがが中耳腔の浸出液が修復されるまで一週間を要する 鼓膜は完全に破れよう。

海水が外耳道から中耳腔に及び冷水の浸出による平衡感覚の失調、めまいがおこる。修復には二週間かかる。

実践バルサルバ法(鼻を摘み、息む)

説明:内耳とマスクを均衡化(耳抜き)するために、あなたの指で閉じられる両方の鼻孔をつまんでください。
そして、息を吐く、腹部の横隔膜と胸筋肉収縮。
空気は耳管に押し込まれます。そして、外部の水圧と均衡化します。
利点:簡単に学べる。
短所:たくさんの空気を浪費します。
速く潜行している場合、完全に両耳を均衡化するために、減速する必要があります。
より深い深さへ潜行は腹部と胸に大きな労力を必要とします。
そしてそれは傷害が生じる恐れがあります。

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注意:耳抜きがうまくできないダイバーが潜行時、力んで耳抜きをすると急に中耳の内の圧力が高まり、鼓膜、中耳に損傷を与えるケースがあります。
肺より送気できる圧力は0.3~0.5気圧で腹筋、胸筋が弱ってくると送気できる圧力も必然的に弱ってきますが適正な量に空気を送り込まなければなりません。
そのためのオトヴェントという滲出性中耳炎の治療の為に開発された風船が有効です。
近年、オトヴェントによる耳管通気の基本原理が、ダイビングにおける耳抜きと同じであることより、ダイバーの耳抜き練習用のグッズとして用いられております。
また、オトヴェントを使用することにより適正な空気が中耳に送られ、鼓膜へのダメージが
低減します。

ダイバー用オトヴェント耳抜き練習ビデオ

子供向け耳抜け指導

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バルサルバ法を例に子供に耳抜きを教える方法を記載。
1. 専門用語は使用しない。
2. 抽象的ではなく、具体的に教える。
・実際にジェスチャーして、見せる。
・写真、イラストで簡潔に説明。
3.  ステップ毎に教える。
4.指導者は一度、説明が済んだら実際に実践させて悪い箇所を教える。

『指導手順』

①「3m以上潜ると耳が痛くなります。その痛みを防止する方法教えます」

② 「しっかり鼻を摘んで鼻をかむ様に息を吹き出します」
息を吸い込む事、鼻をしっかり摘む事、鼻に空気を送り込む事、を口頭で伝えます。
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④ 指導者は子供の前で 動作をやって見せます。
その時、『鼻筋がしっかりと膨らむ』様子を 子供に見せる。
* 少なくとも 2秒以上、鼻筋が膨らむ様に 鼻に空気を送り込みます。
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⑤ 実際 子供に耳抜きをさせて、その時の鼻筋の膨らみ具合を確認します。

⑥実際にスノーケルのマウスピースを銜えた状態から耳抜きをさせて、再度 鼻筋の膨らみ具合を確認します。
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⑦ 実際にマスク、スノーケルを装着して耳抜きを行います。

耳抜きがうまくなるコツは??

1.潜る前に海面で鼻腔を塞いで嚥下動作をする。両耳の耳管に空気が送りこまれ鼓膜が“ポ”という音、あるいは空気の反射音が聞こえるはず。

耳管が開くシグナルである。チューインガムを噛むのも練習の一助になる。

2.フィートファーストで海面から頭が沈むや否やフレンェル法による通気を始める。

フレンェル法による耳抜きをこまめに行う、水深3から5mの耳抜きがポイントである。

3.ビーチダイブでは足が届く場所から水深1mごとに耳抜きを行う。

4.ボートダイブでは潜行がアンカーロープに捕まってフレンェル法でこまめに耳抜きをおこなう。

5.フリーダイビング(スキンダイビング)では潜行速度が速すぎる。バルサルバ法に頼らざる場合が多い。

バルサルバ法に頼るには危険。鼻痛したら素早く浮上する。

フィートファーストで潜る場合、耳抜きに都合がよい。咽頭の空気は鼻咽腔に周囲に溜まり、水状の粘液は咽喉の下方に沈み、耳管に空気が入りやすい。

また、頭が上なので鼻咽喉腔周囲組織の鬱血もおこらず、耳管帆張筋の反射が起こりやすい。同時に亜顎をあげ、首筋を伸ばすと耳管通気がおこりやすくなる。

6.耳抜きは体のひねりを利用する(参考動画は下記)

更に詳しいダイビングの耳抜きについての電子書籍も格安でAMAZONで販売しております。

参考文献:

1.事故を起こさないための潜水医学  大岩 弘典 (著)

2.ダイバーのための潜水医学テキスト (大型本) カール・エドモンズ (著),

3.「日本人のための英語発音完全教本」 竹内真生子(著)

参考サイト:

PROTECS JAPAN

The Frenzel Technique, Step-by-Step

Equalizing BTV VTO Engl

斉藤治療院

Eustachian Tube Institute

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また、本書内容は2014年11月30日現在の情報に基づいておりますのでWebサイトのURL等が変更される場合がありますのでご了承願います。

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